食中毒というと一般的には夏に多く発生するイメージがありますが、例年ノロウイルスによる食中毒は晩秋から春先にかけて流行し、特に冬場にピークを迎えます。このノロウイルスには有効なワクチンや特効薬もなく、感染力が強いため日々の予防を徹底することが大切です。
主な感染経路
ノロウイルスの感染経路はさまざまですが、たいていの場合は口からウイルスが入る「経口感染」で、大きく分けて「人からの感染」と「食品からの感染」の2通りがあります。
- ・人からの感染
感染者の嘔吐物や排泄物が手や指に触れてノロウイルスが付着したり、感染者の嘔吐物などが床に飛散した際に周囲にいてノロウイルスを含んだ飛沫を吸い込むことで感染につながります。また、感染者が排便後に十分に手を洗わずに触れたトイレのドアノブなどを介して感染につながる場合もあります。
- ・食品からの感染
ノロウイルスに感染した人が調理する食品にノロウイルスが付着し、その食品を口にすることで二次的に感染します。また、ノロウイルスに汚染されている食品を十分に加熱せずに食べた場合にも感染につながります。
主な感染経路
感染した場合、約24〜48時間の潜伏期間をもって発症し、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、発熱などの症状が出てきます。多くの場合、これらの症状が1〜2日間ほど続いた後に治まっていきます。感染しても発症しない人や軽い風邪のような症状で済む人もいますが、持病がある人や乳幼児、高齢者などは脱水症状になったり上記の症状が重くなる場合もあるため注意が必要です。
ノロウイルスによる食中毒を予防する4つのポイント
前述のようにノロウイルスにはワクチンや特効薬がなく、治療は輸液などの対症療法に限られており、感染力も強いためまずは日々の予防を徹底することが大切です。
1.ノロウイルスを持ち込まない
食品を調理する場所にノロウイルスを持ち込まないように注意することが重要です。家庭での調理などで食品に触れる機会がある場合には、特に事前の丁寧な手洗いや日々の健康管理を心掛けた上で、腹痛や下痢などの症状が見られるときは食品に触れる作業は控えましょう。
2.ノロウイルスを付けない
台所や調理場に入ったり、料理を盛り付けたり食卓に食器を並べる場合など、食品や食器、調理器具などに触れる前には必ずせっけんで丁寧に手洗いをしましょう。調理中に別の用事が入り中断した場合も同様に必ず手を洗うようにします。
3.ノロウイルスをやっつける
加熱して食べる食品は中心部までしっかりと火を通しましょう。食品に付着したノロウイルスを死滅させるためには、中心温度85〜90℃で90秒以上の加熱が必要です。
調理器具や調理台は洗剤で十分に洗浄した後、85℃以上の熱湯で1分以上の加熱消毒をすることが有効です。加熱できない物は塩素消毒液*などに浸して消毒しましょう。
*塩素消毒液は、次亜塩素酸ナトリウムを水で薄める等で作ることができます。家庭用の次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤でも代用できます。製品に記載の希釈量を基に必ず薄めてから使用してください。
4.ノロウイルスを広げない
もしも身近でノロウイルスによる食中毒が発生したときには、感染を広げないために食器や周囲の生活環境の消毒を徹底し、嘔吐物などの処理で二次感染が起きないよう十分な注意を払うことが大切です。
感染者が触れたり、感染者の嘔吐物などが付着した可能性のある物は、他の物と分けて洗浄・消毒しましょう。食器は食後すぐに塩素消毒液に十分浸して消毒をしてから食器棚に片付けましょう。また、ドアノブなど人の手が触れる機会が多い場所も塩素消毒液などで消毒し、カーテンや衣類の洗濯は洗剤を入れた水の中で静かにもみ洗いをするようにして十分にすすぎましょう。
感染者の嘔吐物などを処理する場合には、使い捨てのマスクや手袋などを必ず着用して二次感染を予防します。嘔吐物などが乾燥する前にペーパータオルなどで除去した後、付着していた場所を塩素消毒液で拭き取りましょう。嘔吐物などやそれらを拭き取った際に着けていたマスクや手袋などは必ずビニール袋に密閉して廃棄するようにします。
換気は、屋内への拡散防止のために、嘔吐物の処理が完全に終わってから空気の流れに注意しながら行いましょう。
作業の途中や最後に丁寧に手を洗うことも忘れてはいけません。
ノロウイルスによる食中毒になった場合
ノロウイルスによる食中毒と思われる症状が現れた場合は、無理に職場や学校へは行かずに、必ず医療機関にかかりましょう。職場や学校に行ってしまうと多くの人に二次感染を広げてしまう恐れがあります。ノロウイルスと診断された場合は、その感染の旨を職場や学校に連絡し、医師の許可が出るまで自宅で休養しましょう。
また、症状が治まってからもしばらくの間は便からウイルスが排出されますので、感染を広げないための手洗いをはじめとする予防は引き続き徹底しましょう。